今回の投稿は、クラウンエイジェンツ・ウクライナ(CAU)からの寄稿です。
ウクライナの農業は、国家経済と食料安全保障を支える基幹産業です。しかし戦争によって、多くの農地が損傷し、農業機械は破壊され、研究機関は必要な設備へのアクセスを失いました。こうした状況の中、農業の再建と科学的基盤の維持は、ウクライナの復興だけでなく、国際的な食料供給の安定にも直結しています。
日本政府は、緊急復旧無償資金協力を通じて農業分野への支援を決定しました。この支援は、独立行政法人 国際協力機構(JICA)が実施主体となり、クラウンエイジェンツ・ジャパン(CAJ)が調達代理として機材や資源を調達・供与する形で行われています。
CAUは現地パートナーとして、農業研究機関や農家との連携を担い、資機材の受け入れ・配備・活用を支えています。

包括的な支援パッケージで研究と生産を後押し
本プログラムでは、ウクライナの主要な農業研究機関に対し、幅広い機材と資源が供与されました。内容は以下の通りです。
- 農業機械の供与
損傷した機材を代替し、農作業を継続するために、トラクター、コンバイン、播種機を提供。 - 発電機の配備
農場や研究施設の停電時にも作業を継続できるよう、ディーゼル発電機を供与。 - 先端的なラボ機器
ガスクロマトグラフ、原子吸光分析装置、ICP-MS、自動土壌サンプラーなど、土壌・種子・作物品質の研究を支える機材を整備。 - 主要作物の種子供与
小麦、大麦、ライ麦、菜種など、播種サイクルを再開するための種子を提供。 - 研究・実験用ツールの充実
GNSS/RTK受信機、フィールド用タブレット、農業機械の性能評価用動力計システムなど、先端的な研究・実験設備を配備。
短期的な農業活動の再開と、長期的な研究・技術基盤の強化の両面を支える内容です。

主要研究機関への支援
この支援は、ウクライナを代表する4つの主要な研究機関に重点的に配分されました。
- ウクライナ土壌保護研究所
高度なラボ機器および土壌分析ツールを受領。 - 農業機械・技術予測・試験ウクライナ研究所
機械・発電機・種子を受け取り、実験的な播種を再開。 - ウクライナ植物品種検査研究所
新たな作物品種の試験・認証を支えるため、トラクター、播種機、インキュベーター、ラボ機器を供与。 - V.M. レメスロ・ミロニウカ小麦研究所
小麦研究を継続するためのトラクター、インキュベーター、播種機を配備。
CAUは各研究機関と緊密に連携し、供与機材が円滑に配備・活用されるよう調整を行いました。これにより、農業研究の継続と生産活動の再開が可能になっています。
現場に広がる効果
供与された機材・資源は、研究機関と農家双方にとって大きな効果をもたらしています。戦時下であっても、播種・収穫・作物検査といった基礎的な農業活動を継続することが可能となり、農業科学の中核も維持されています。
これらの取り組みは、地域経済の安定と、国際的な食料供給ネットワークの維持にも直結しています。

将来への投資
今回の支援は緊急対応にとどまらず、長期的な視点でも重要な意味を持っています。肥沃な土地と高い科学的知見を持つウクライナは、世界の食料安全保障における重要な供給国です。
供与された機材・設備は今後も活用され続け、農業分野の再建と発展の基盤を強化します。
連帯と協働の支援
JICAを通じた日本の支援は、困難な状況にあるウクライナへの強い連帯の表れです。
CAUは、JICAとCAJの取り組みを現場で支えるパートナーとして、研究機関や農家とともに農業の再建に取り組んでいます。
「農業は国の力」——支援が未来
日本政府と日本の人々の支援によって、ウクライナでは農業活動と研究が再び力強く動き始めています。CAUは、現場の最前線からこの重要な取り組みを支え続けます。