こんにちは。クラウンエイジェンツ・ジャパン広報チームです。
このたび当社は、ブログを通じて私たちの業務や取り組みを少しずつご紹介していくために広報チームを立ち上げました。
クラウンエイジェンツ・ジャパンは、株式会社としては日本で唯一、「調達代理業務」を専門とする会社です。
「調達代理」と聞いても、あまり馴染みがないかもしれません。簡単にご説明すると、日本政府が新興国などの政府に対して行う無償資金協力(ODA)で運用されているスキームの一つで、相手国政府に直接現金を送金するのではなく、私たちのような調達代理機関が、供与された資金を用いて機材や設備などの必要物資を購入し、現地へ届ける役割を担っています。
供与資金は日本の国民の皆さまの大切な税金です。その資金が無駄なく、適切に、契約どおりに使われるよ う、調達代理機関は透明性と信頼性を重視して業務を行っています。業務範囲は調達から輸送、納品、さらには技術指導まで多岐にわたります。
このブログでは、そうした「調達代理」の仕事の中身を、できるだけ分かりやすくお届けしていきます。
第1回インタビュー:経験豊富な佐納さんが語る、モザンビークへの巡視艇供与事業
記念すべき第1回は、当社で最も長く勤務し、多くのプロジェクトに携わってきた佐納秀美さんにご登場いただきます。
今回は、佐納さんが担当された「令和3年度 無償資金協力経済社会開発計画モザンビーク共和国に対する海上保安機材整備プロジェクト」について、お話を伺いました。
(広報)
それでは佐納さん、よろしくお願いします!
(佐納)
はい、よろしくお願いします。
(広報)
まず、モザンビークに巡視艇が供与された背景について教えてください。
(佐納)
近年モザンビークを経由する麻薬取引が増大しており、モザンビークは中東からアフリカ南部、欧州へと続く麻薬ルートの中継地とされています。また、同国沖では規定量を超過する漁獲を行っている違法漁業者が問題になっています。しかし、モザンビークの沿岸警備隊は巡視艇を保有していないため、独自の海上監視ができず、海上監視能力の強化が課題となっていました。
日本政府は、2019年8月に開催した第7回アフリカ開発会議(TICAD7)において、海洋安全保障や持続可能な水産資源利用を含むブルーエコノミーの発展を支援する旨表明しました。本プロジェクトは、同表明を具体化するとともに、モザンビーク政府の海上法執行能力の強化による平和と安定の確保を通じて、自由で開かれたインド太平洋の実現に寄与するものと期待されています。
(広報)
なるほど、非常に興味深いですね。ところで、巡視艇の調達というと少しイメージが湧きにくいのですが、実際にはスムーズに進んだのでしょうか?
(佐納)
巡視艇は既成品ではないので、まずは専門の船舶コンサルタントを雇用して地形や気象、港湾の状況を含めた現地調査を実施して、どのような船舶が現地に必要とされているかを慎重に検討した上で、仕様を作成するところから始めました。海洋警察はこれまで巡視艇についての知識を持ち合わせていなかったため、先方の要望を踏まえつつ、実績のあるコンサルタントと造船所の知見に頼って、綿密に詳細設計を進める部分にはかなり時間をかけました。
(広報)
ありがとうございます。供与された巡視艇は、日本の海上保安庁が使っているものと同じタイプなのですか?
(佐納)
海上保安庁は様々なサイズの巡視艇を保有していますが、装備については本案件の巡視艇とは異なります。モザンビーク向けの巡視艇は、地形や保守管理能力、維持管理コスト等を考慮して、制限条件下で最大限の高速性能と航続距離のバランスを保つ選択肢として、日本で採用されているWJ(ウォータージェット)式ではなく、プロペラ式の推進装置を採用しています。
(広報)
今月11日にモザンビークで引き渡し式が行われたとのことですが、巡視艇は日本から海を渡って届けられたのですか?
(佐納)
20m級の巡視艇は自走ではモザンビークまで航行できませんので、補給備品および装備品等と共に、東京都江東区の造船所から東京湾経由で横浜港から2025年2月19日に貨物船に船積みされました。昨今の経由港の混雑等の影響で時間はかかったものの、4月12日に無事にナカラ港に到着し、4月22日に海洋警察に正式に引き渡しを完了しました。

(広報)
現地での反応はいかがでしたか?日本政府からの巡視艇供与について、市民の皆さんから感謝の声は届いていますか?
(佐納)
巡視艇はQUIONGA(キオンガ号)と名付けられ、海洋警察初の巡視艇として注目を浴びています。7月11日にペンバにて開催された引き渡し式典は、濵田駐モザンビーク特命全権大使、州知事、国家警察司令官、州警察司令官、ペンバ入国管理局長、内務省高官、その他治安当局者など、政府関係者の方々にご出席いただき、大変盛況のうちに終了しました。現在のところ、巡視艇の活動範囲は、主に内務省の警備区域となるため、一般市民の方々が巡視艇を目にする機会はもう少し先になるかもしれません。
(広報)
それは素晴らしいですね。とはいえ、ここに至るまでにはご苦労も多かったかと思います。特に大変だった点があれば教えていただけますか?
(佐納)
海洋警察に納入される初めての巡視艇ということで、念入りな事前トレーニングが必要でした。主機関のメーカーによる保守管理のトレーニング、造船所での構造および船舶操舵等のトレーニングのために、モザンビークから沿岸警備隊の乗組員や機関士の方々に日本まで渡航いただく必要があり、招へいの調整に苦労しました。しかしながら、皆さん熱心に取り組んでくださり、特に日本では1月の厳冬期の実習となったにも関わらず、最後までがんばって技能を習得いただけて、感無量です。

(広報)
本当に大変なご経験だったのですね。そんな中でも、佐納さんはこの仕事にやりがいを感じていらっしゃるように見えます。調達代理という仕事では完了までに色々と困難に直面することもありそうですね?
(佐納)
調達代理は日本政府と被援助国の間に入って両方の満足度を上げるために、様々な調整を行う裏方仕事です。書類作成が多くを占めるので、光の当たる仕事とは言えませんが、日本政府側の思いや被援助国側の期待を酌みつつも、入札や資金管理を含めた調達手続きに透明性を確保する必要があるため、かなり気を遣う業務でもあります。調整がうまく進まない時には、へこたれそうにもなりますが、無事に引き渡しが完了し、現地の方々の喜びの声や日本政府からの慰労の声を聞くと、苦労のかいがあったと思え、案件途中でくよくよと悩んだ記憶などは全て吹っ飛んでしまいます。全ての調達が終わり、 完了報告書を提出した時にはやり切った満足感でいっぱいになります。
(広報)
とてもよく分かりました。佐納さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
今回のインタビューを通じて、「調達代理」という仕事の重要性と、その現場で奮闘するスタッフの想いが少しでも伝われば嬉しく思います。
クラウンエイジェンツ・ジャパンでは、今回ご紹介したモザンビークの巡視船のように、多くの国々でODAを支える調達業務を行っています。それぞれのプロジェクトには、苦労や工夫、そして多くの感動があります。今後も、このブログを通じて現場のストーリーをご紹介してまいりますので、ぜひご期待ください。
次回のレポートをお楽しみに!