Crown Agents Ukraine:ウクライナ復興の最前線で医療レジリエンスを構築する

10月下旬、ウクライナ全土から130名を超える外科医、外傷治療専門医、医療従事者がイヴァノ・フランキフスクに集い、第6回再建外科国際シンポジウムが開催されました。本シンポジウムは、戦時下におけるウクライナの医療レジリエンス強化と国際協力の加速を象徴するものとなりました。

本イベントには、カナダおよび米国の第一線で活躍する専門家が参加し、子どもから成人に至るまでの顔面および顎顔面再建の先進技術を共有しました。セッションでは、顎骨折、気道再建、瘢痕修正、軟部組織再生など、戦争関連外傷に対応するウクライナの医師にとって極めて重要性が高まっている複合外傷の治療に焦点が当てられました。

同時に、ウクライナの外科医も、戦時下の過酷な環境下で2年以上にわたり複雑な外傷症例に対応してきた経験と独自の工夫を発表しました。彼らの技術力、実践的な課題解決能力、そして医師同士による指導力は、いまや国際的にも高い評価を得る水準に達しています。


ウクライナの医療レジリエンス強化を支える取り組み

このイベントは、Patients of Ukraine(Пацієнти України)が主催し、戦争で影響を受けた子どもとその家族を支援するウクライナの市民社会組織を強化する Children’s Resilience Fund(CRF) の一環として実施されたものです。

CRFは、Crown Agents Ukraine(CAU)がIntegrity Actionと協働して実施するもので、医療支援、専門研修、NGO能力強化を組み合わせた包括的なプログラムです。ウクライナのパートナーが、より強靭で持続可能かつ国際ネットワークと連携した組織へと成長することを目的としています。

ウクライナのNGO、国際的な医療専門家、政府機関の連携を促進することで、CAUはウクライナの医療エコシステムの強化に直接貢献しています。これにより、人道支援は単なる緊急対応にとどまらず、長期的な発展と自立へとつながっています。


緊急対応から持続可能な能力構築へ

CAUは、医療復興に関する多くの取り組みを支援しており、その中心にあるのは「現地主体」と「持続可能性」です。主なアプローチは以下のとおりです。

  • 現地専門家を対象とした研修、メンタリング、国際的ベストプラクティスへのアクセス強化
  • 病院、大学、NGO間のレジリエントなネットワーク構築
  • プログラム実施における透明性と説明責任の確保
  • 医学教育および医療システム運営におけるイノベーション促進

これらの方針は、知識移転と制度強化を重視する日本の国際協力の基本理念とも高い親和性を持っています。


日本の対ウクライナ協力における信頼性の高いゲートウェイ

CAUは困難な現場環境で長年培った実務経験に基づき、現場密着型の高度な専門性を有しています。その信頼性の高いネットワークは、市民社会、地方自治体、中央省庁に広く及び、実効性と透明性を確保したプロジェクト実施を可能としています。

日本の政府機関、財団、民間企業がウクライナでの事業参画を検討する際、CAUは実績に裏打ちされた信頼できるパートナーとして大きな価値を提供します。その活動は、Crown Agents Japan(CAJ)が長年大切にしてきた協働、品質、着実な成果創出の理念を体現しています。


共有する価値観と長期的ビジョン

Children’s Resilience Fundや本シンポジウムのような取り組みで育まれている医療レジリエンスは、国際協力が単なる支援を超え、国家の回復・治癒・再生を後押しする力となり得ることを示しています。

CAJは、CAUおよび世界のパートナーとの協働を今後も継続できることを誇りに思います。ウクライナの医療専門家の支援、現地機関の強化、そして同国の復興と将来の繁栄を担う人々への投資を、これからも着実に進めてまいります。

💧 JICAの支援でウクライナの水道事業体を支援:CAUが現場からレポート

本記事はクラウンエイジェンツ・ウクライナ(CAU)からの寄稿です。

戦争が続くウクライナでは、水道インフラの破損やエネルギー不足により、多くの都市や町で上水供給・下水処理が深刻な影響を受けています。安全で安定した水へのアクセスは、人々の健康、衛生、そして日常生活の維持に不可欠なものです。

日本政府は、緊急復旧無償資金協力を通じて、こうした状況への支援を決定しました。この支援は、独立行政法人 国際協力機構(JICA)が実施主体となり、クラウンエイジェンツ・ジャパン(CAJ)が調達代理として、必要な資機材を迅速に調達・供与する形で行われています。
CAUは現地パートナーとして、この支援が現場で確実に活用されるよう、水道事業体との連携や資機材の受け入れ支援を担当しました。


現場を支える重要な設備

本プログラムでは、ウクライナ各地の水道事業体に対し、運営と復旧力を強化するためのさまざまな資機材が届けられました。

  • ディーゼル発電機
     停電時でもポンプ場や浄水場を稼働させるため、さまざまな容量の発電機を配備。
  • ポンプおよび交換部品
     破損したインフラの修復や給水システムの維持に不可欠な機材を供与。
  • 水質監視用ラボ機器
     安全基準に適合した水質を維持するための分析・モニタリング機材を提供。
  • 特殊車両および修理用ツール
     緊急時にも現場スタッフが迅速に対応し、困難な状況下で給水サービスを復旧できる体制を整備。

この支援によって、戦時下でも数百万人のウクライナ市民が、生活に欠かせない安全な水を利用できる環境が守られています。


地域コミュニティへの直接的なインパクト

発電機やポンプといった資機材の供与は、地域社会に即座に影響を与えています。水道事業体は、家庭・病院・学校などへの給水を途切れることなく続けることができ、衛生環境や感染症リスクの低減に大きく寄与しています。
とりわけ前線地域や被害の大きい地域では、この支援が生活の継続と人道危機の分岐点となっています。

CAUは現場の水道事業体と緊密に連携し、供与された機材が円滑に配備・活用されるようサポートを続けています。


長期的な復旧・強靭化への貢献

今回の供与機材は、短期的な復旧にとどまらず、今後も長期にわたって活用されます。水道事業体は、将来の危機への備えを強化し、エネルギーの不安定さにも柔軟に対応しながら、運営の近代化を進めていくことが可能になります。
これにより、ウクライナの水道インフラは現在の緊急対応だけでなく、将来の復旧・発展に向けた強靭な基盤を築くことができます。


連帯に基づく支援

JICAを通じた日本の支援は、困難な状況にあるウクライナへの強い連帯の表れです。安全な水は人々の暮らしを支える最も基本的な要素のひとつであり、その供給を守ることは希望と友情の象徴でもあります。

CAUは、JICA、CAJ、そして各地域の水道事業体と連携し、この重要な支援を確実に現場に届ける役割を担い続けます。


「水は命」——支援がつなぐ日常

日本政府と日本の人々の支援により、ウクライナの家庭には、最も厳しい状況下においても、安全な水が届けられ続けています。CAUは、これからも現場の最前線から、人々の暮らしを守る取り組みを支えていきます。

🌾 JICAの支援でウクライナの農業研究・生産を支援:ウクライナからレポート

今回の投稿は、クラウンエイジェンツ・ウクライナ(CAU)からの寄稿です。

ウクライナの農業は、国家経済と食料安全保障を支える基幹産業です。しかし戦争によって、多くの農地が損傷し、農業機械は破壊され、研究機関は必要な設備へのアクセスを失いました。こうした状況の中、農業の再建と科学的基盤の維持は、ウクライナの復興だけでなく、国際的な食料供給の安定にも直結しています。

日本政府は、緊急復旧無償資金協力を通じて農業分野への支援を決定しました。この支援は、独立行政法人 国際協力機構(JICA)が実施主体となり、クラウンエイジェンツ・ジャパン(CAJ)が調達代理として機材や資源を調達・供与する形で行われています。
CAUは現地パートナーとして、農業研究機関や農家との連携を担い、資機材の受け入れ・配備・活用を支えています。

包括的な支援パッケージで研究と生産を後押し

本プログラムでは、ウクライナの主要な農業研究機関に対し、幅広い機材と資源が供与されました。内容は以下の通りです。

  • 農業機械の供与
     損傷した機材を代替し、農作業を継続するために、トラクター、コンバイン、播種機を提供。
  • 発電機の配備
     農場や研究施設の停電時にも作業を継続できるよう、ディーゼル発電機を供与。
  • 先端的なラボ機器
     ガスクロマトグラフ、原子吸光分析装置、ICP-MS、自動土壌サンプラーなど、土壌・種子・作物品質の研究を支える機材を整備。
  • 主要作物の種子供与
     小麦、大麦、ライ麦、菜種など、播種サイクルを再開するための種子を提供。
  • 研究・実験用ツールの充実
     GNSS/RTK受信機、フィールド用タブレット、農業機械の性能評価用動力計システムなど、先端的な研究・実験設備を配備。

短期的な農業活動の再開と、長期的な研究・技術基盤の強化の両面を支える内容です。

主要研究機関への支援

この支援は、ウクライナを代表する4つの主要な研究機関に重点的に配分されました。

  • ウクライナ土壌保護研究所
     高度なラボ機器および土壌分析ツールを受領。
  • 農業機械・技術予測・試験ウクライナ研究所
     機械・発電機・種子を受け取り、実験的な播種を再開。
  • ウクライナ植物品種検査研究所
     新たな作物品種の試験・認証を支えるため、トラクター、播種機、インキュベーター、ラボ機器を供与。
  • V.M. レメスロ・ミロニウカ小麦研究所
     小麦研究を継続するためのトラクター、インキュベーター、播種機を配備。

CAUは各研究機関と緊密に連携し、供与機材が円滑に配備・活用されるよう調整を行いました。これにより、農業研究の継続と生産活動の再開が可能になっています。

現場に広がる効果

供与された機材・資源は、研究機関と農家双方にとって大きな効果をもたらしています。戦時下であっても、播種・収穫・作物検査といった基礎的な農業活動を継続することが可能となり、農業科学の中核も維持されています。
これらの取り組みは、地域経済の安定と、国際的な食料供給ネットワークの維持にも直結しています。

将来への投資

今回の支援は緊急対応にとどまらず、長期的な視点でも重要な意味を持っています。肥沃な土地と高い科学的知見を持つウクライナは、世界の食料安全保障における重要な供給国です。
供与された機材・設備は今後も活用され続け、農業分野の再建と発展の基盤を強化します。

連帯と協働の支援

JICAを通じた日本の支援は、困難な状況にあるウクライナへの強い連帯の表れです。
CAUは、JICAとCAJの取り組みを現場で支えるパートナーとして、研究機関や農家とともに農業の再建に取り組んでいます。

「農業は国の力」——支援が未来

日本政府と日本の人々の支援によって、ウクライナでは農業活動と研究が再び力強く動き始めています。CAUは、現場の最前線からこの重要な取り組みを支え続けます。

ナイジェリア連邦共和国に対する道路整備関連機材プロジェクト

第3回目の今回は、8月に現地で引き渡し式典が無事に実施された「令和2年度無償資金協力経済社会開発計画ナイジェリア連邦共和国に対する道路整備関連機材プロジェクト」についてご報告します。


ナイジェリアはアフリカ最大級の大国ですが、一方で道路事情に課題があり、整備が不十分なことから、安全性、輸送能力面で大きな障害となっていました。日本政府の対ナイジェリア国別開発協力方針では、経済成長のための基幹インフラの整備、経済活動の拠点となる都市インフラの整備を支援する方針が掲げられています。本プロジェクトでは日本で製造された道路整備関連機材をナイジェリアに供与することにより、かの国の道路インフラ環境を改善し、国内の物流を円滑なものにし、交通利便性を向上させるに留まらず、副次効果として周辺国との円滑な連結にも寄与することが期待されました。更には、ナイジェリアに進出を考える日本企業への後押しとしての期待効果も高く、日本とナイジェリアの関係強化につながる有意義な案件としても期待されています。供与額は3億円で、クラウンエイジェンツ・ジャパンは調達代理機関としてナイジェリア側の実施主体である連邦公共事業省、連邦道路維持公団と緊密に連携、調整を進めて来ました。以下は当社が調達して供与した機材のリストです。

No.機材名数量(台)
1乳剤ローリー1
2ロードスタビライザ1
3振動シングルドラムローラ1
4振動タンデムローラ1
5タイヤローラ1
6ハンドガイドローラ24

2025年8月1日、首都アブジャで試運転及び引き渡し式が開催されました。日本側からは鈴木秀雄特命全権大使、ナイジェリア側からはムハンマド公共大臣を初め連邦公共事業省、道路維持公団から主要な幹部が多数参列しました。鈴木大使からは維持管理の重要性と適切な機材の使用への期待が伝えられ、公共大臣からは日本政府への援助に対する感謝とともに、機材を使用管理する道路公団への適切な維持管理の期待が述べられました。https://www.ng.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00638.html

本プロジェクトではナイジェリア側は連邦道路維持公団のアガバシCEO自らが業務を担当して下さり、そのおかげもあり円滑に推進することが出来ました。当社から担当者が昨年ナイジェリアを訪問した際には、アガバシCEOが過去に訪日した際にメーカーの工場を見学し、そこから道路維持に必要な機材をナイジェリアに導入したいとの思いが高まり、日本政府へ支援をお願いしたとの経緯をお話頂きました。正式に案件として採択され、入札を経て実際に機材が納入するまでは長い道のりでしたが、そのような思い入れをもって希望された機材ですので、きっと大切に使って頂けることと思います。

調達代理機関としてナイジェリアの施主に代わり、国内メーカーの工場検査に立ち会わせて頂く機会もありました。その際、細かいスペアパーツを一つ一つ丁寧に梱包し、現地に着いたときに分かりやすいようにと工夫されている工場の担当者の方の真摯な姿にも強い印象を受けました。こうした現場の多くの方々の目立たない心遣いがあってこそ日本政府の開発援助に魂が込められるものであり、ナイジェリアの方々にも伝わって欲しいとの気持ちをもって丁寧且つスピーディーなコミュニケーションを心がけました。本プロジェクトによりナイジェリアの道路事情が向上し、物流改善を通じた経済発展にも寄与しつつ、多くの日本企業がナイジェリアに進出する決心への後押しとなることが期待されています。ナイジェリアは西アフリカ地域における広域インフラ開発において重要な国ですので、ナイジェリアの成長を梃子に西アフリカ地域全体の経済開発にとっても良い影響がもたらされることを願っております。

引き渡し式でのテープカット

供与機材への試乗の様子

振動シングルドラムローラ

乳剤ローリー