ナイジェリア連邦共和国に対する道路整備関連機材プロジェクト

第3回目の今回は、8月に現地で引き渡し式典が無事に実施された「令和2年度無償資金協力経済社会開発計画ナイジェリア連邦共和国に対する道路整備関連機材プロジェクト」についてご報告します。


ナイジェリアはアフリカ最大級の大国ですが、一方で道路事情に課題があり、整備が不十分なことから、安全性、輸送能力面で大きな障害となっていました。日本政府の対ナイジェリア国別開発協力方針では、経済成長のための基幹インフラの整備、経済活動の拠点となる都市インフラの整備を支援する方針が掲げられています。本プロジェクトでは日本で製造された道路整備関連機材をナイジェリアに供与することにより、かの国の道路インフラ環境を改善し、国内の物流を円滑なものにし、交通利便性を向上させるに留まらず、副次効果として周辺国との円滑な連結にも寄与することが期待されました。更には、ナイジェリアに進出を考える日本企業への後押しとしての期待効果も高く、日本とナイジェリアの関係強化につながる有意義な案件としても期待されています。供与額は3億円で、クラウンエイジェンツ・ジャパンは調達代理機関としてナイジェリア側の実施主体である連邦公共事業省、連邦道路維持公団と緊密に連携、調整を進めて来ました。以下は当社が調達して供与した機材のリストです。

No.機材名数量(台)
1乳剤ローリー1
2ロードスタビライザ1
3振動シングルドラムローラ1
4振動タンデムローラ1
5タイヤローラ1
6ハンドガイドローラ24

2025年8月1日、首都アブジャで試運転及び引き渡し式が開催されました。日本側からは鈴木秀雄特命全権大使、ナイジェリア側からはムハンマド公共大臣を初め連邦公共事業省、道路維持公団から主要な幹部が多数参列しました。鈴木大使からは維持管理の重要性と適切な機材の使用への期待が伝えられ、公共大臣からは日本政府への援助に対する感謝とともに、機材を使用管理する道路公団への適切な維持管理の期待が述べられました。https://www.ng.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00638.html

本プロジェクトではナイジェリア側は連邦道路維持公団のアガバシCEO自らが業務を担当して下さり、そのおかげもあり円滑に推進することが出来ました。当社から担当者が昨年ナイジェリアを訪問した際には、アガバシCEOが過去に訪日した際にメーカーの工場を見学し、そこから道路維持に必要な機材をナイジェリアに導入したいとの思いが高まり、日本政府へ支援をお願いしたとの経緯をお話頂きました。正式に案件として採択され、入札を経て実際に機材が納入するまでは長い道のりでしたが、そのような思い入れをもって希望された機材ですので、きっと大切に使って頂けることと思います。

調達代理機関としてナイジェリアの施主に代わり、国内メーカーの工場検査に立ち会わせて頂く機会もありました。その際、細かいスペアパーツを一つ一つ丁寧に梱包し、現地に着いたときに分かりやすいようにと工夫されている工場の担当者の方の真摯な姿にも強い印象を受けました。こうした現場の多くの方々の目立たない心遣いがあってこそ日本政府の開発援助に魂が込められるものであり、ナイジェリアの方々にも伝わって欲しいとの気持ちをもって丁寧且つスピーディーなコミュニケーションを心がけました。本プロジェクトによりナイジェリアの道路事情が向上し、物流改善を通じた経済発展にも寄与しつつ、多くの日本企業がナイジェリアに進出する決心への後押しとなることが期待されています。ナイジェリアは西アフリカ地域における広域インフラ開発において重要な国ですので、ナイジェリアの成長を梃子に西アフリカ地域全体の経済開発にとっても良い影響がもたらされることを願っております。

引き渡し式でのテープカット

供与機材への試乗の様子

振動シングルドラムローラ

乳剤ローリー

モザンビーク共和国に対する海上安全保障能力向上のための支援

こんにちは。クラウンエイジェンツ・ジャパン広報チームです。
このたび当社は、ブログを通じて私たちの業務や取り組みを少しずつご紹介していくために広報チームを立ち上げました。

クラウンエイジェンツ・ジャパンは、株式会社としては日本で唯一、「調達代理業務」を専門とする会社です。
「調達代理」と聞いても、あまり馴染みがないかもしれません。簡単にご説明すると、日本政府が新興国などの政府に対して行う無償資金協力(ODA)で運用されているスキームの一つで、相手国政府に直接現金を送金するのではなく、私たちのような調達代理機関が、供与された資金を用いて機材や設備などの必要物資を購入し、現地へ届ける役割を担っています。
供与資金は日本の国民の皆さまの大切な税金です。その資金が無駄なく、適切に、契約どおりに使われるよ う、調達代理機関は透明性と信頼性を重視して業務を行っています。業務範囲は調達から輸送、納品、さらには技術指導まで多岐にわたります。

このブログでは、そうした「調達代理」の仕事の中身を、できるだけ分かりやすくお届けしていきます。

第1回インタビュー:経験豊富な佐納さんが語る、モザンビークへの巡視艇供与事業
記念すべき第1回は、当社で最も長く勤務し、多くのプロジェクトに携わってきた佐納秀美さんにご登場いただきます。
今回は、佐納さんが担当された「令和3年度 無償資金協力経済社会開発計画モザンビーク共和国に対する海上保安機材整備プロジェクト」について、お話を伺いました。

日本でのトレーニング風景。日の丸が見えます。

(広報)
それでは佐納さん、よろしくお願いします!

(佐納)
はい、よろしくお願いします。

(広報)
まず、モザンビークに巡視艇が供与された背景について教えてください。

(佐納)
近年モザンビークを経由する麻薬取引が増大しており、モザンビークは中東からアフリカ南部、欧州へと続く麻薬ルートの中継地とされています。また、同国沖では規定量を超過する漁獲を行っている違法漁業者が問題になっています。しかし、モザンビークの沿岸警備隊は巡視艇を保有していないため、独自の海上監視ができず、海上監視能力の強化が課題となっていました。
日本政府は、2019年8月に開催した第7回アフリカ開発会議(TICAD7)において、海洋安全保障や持続可能な水産資源利用を含むブルーエコノミーの発展を支援する旨表明しました。本プロジェクトは、同表明を具体化するとともに、モザンビーク政府の海上法執行能力の強化による平和と安定の確保を通じて、自由で開かれたインド太平洋の実現に寄与するものと期待されています。

(広報)
なるほど、非常に興味深いですね。ところで、巡視艇の調達というと少しイメージが湧きにくいのですが、実際にはスムーズに進んだのでしょうか?

(佐納)
巡視艇は既成品ではないので、まずは専門の船舶コンサルタントを雇用して地形や気象、港湾の状況を含めた現地調査を実施して、どのような船舶が現地に必要とされているかを慎重に検討した上で、仕様を作成するところから始めました。海洋警察はこれまで巡視艇についての知識を持ち合わせていなかったため、先方の要望を踏まえつつ、実績のあるコンサルタントと造船所の知見に頼って、綿密に詳細設計を進める部分にはかなり時間をかけました。

(広報)
ありがとうございます。供与された巡視艇は、日本の海上保安庁が使っているものと同じタイプなのですか?

(佐納)
海上保安庁は様々なサイズの巡視艇を保有していますが、装備については本案件の巡視艇とは異なります。モザンビーク向けの巡視艇は、地形や保守管理能力、維持管理コスト等を考慮して、制限条件下で最大限の高速性能と航続距離のバランスを保つ選択肢として、日本で採用されているWJ(ウォータージェット)式ではなく、プロペラ式の推進装置を採用しています。

(広報)
今月11日にモザンビークで引き渡し式が行われたとのことですが、巡視艇は日本から海を渡って届けられたのですか?

(佐納)
20m級の巡視艇は自走ではモザンビークまで航行できませんので、補給備品および装備品等と共に、東京都江東区の造船所から東京湾経由で横浜港から2025年2月19日に貨物船に船積みされました。昨今の経由港の混雑等の影響で時間はかかったものの、4月12日に無事にナカラ港に到着し、4月22日に海洋警察に正式に引き渡しを完了しました。

ナカラ港に到着した巡視艇Quionga。貨物船に「船積み」された意味がよく解ります。

(広報)
現地での反応はいかがでしたか?日本政府からの巡視艇供与について、市民の皆さんから感謝の声は届いていますか?

(佐納)
巡視艇はQUIONGA(キオンガ号)と名付けられ、海洋警察初の巡視艇として注目を浴びています。7月11日にペンバにて開催された引き渡し式典は、濵田駐モザンビーク特命全権大使、州知事、国家警察司令官、州警察司令官、ペンバ入国管理局長、内務省高官、その他治安当局者など、政府関係者の方々にご出席いただき、大変盛況のうちに終了しました。現在のところ、巡視艇の活動範囲は、主に内務省の警備区域となるため、一般市民の方々が巡視艇を目にする機会はもう少し先になるかもしれません。

(広報)
それは素晴らしいですね。とはいえ、ここに至るまでにはご苦労も多かったかと思います。特に大変だった点があれば教えていただけますか?

(佐納)
海洋警察に納入される初めての巡視艇ということで、念入りな事前トレーニングが必要でした。主機関のメーカーによる保守管理のトレーニング、造船所での構造および船舶操舵等のトレーニングのために、モザンビークから沿岸警備隊の乗組員や機関士の方々に日本まで渡航いただく必要があり、招へいの調整に苦労しました。しかしながら、皆さん熱心に取り組んでくださり、特に日本では1月の厳冬期の実習となったにも関わらず、最後までがんばって技能を習得いただけて、感無量です。

ナカラ港で行われた保守管理トレーニングの風景

(広報)
本当に大変なご経験だったのですね。そんな中でも、佐納さんはこの仕事にやりがいを感じていらっしゃるように見えます。調達代理という仕事では完了までに色々と困難に直面することもありそうですね?

(佐納)
調達代理は日本政府と被援助国の間に入って両方の満足度を上げるために、様々な調整を行う裏方仕事です。書類作成が多くを占めるので、光の当たる仕事とは言えませんが、日本政府側の思いや被援助国側の期待を酌みつつも、入札や資金管理を含めた調達手続きに透明性を確保する必要があるため、かなり気を遣う業務でもあります。調整がうまく進まない時には、へこたれそうにもなりますが、無事に引き渡しが完了し、現地の方々の喜びの声や日本政府からの慰労の声を聞くと、苦労のかいがあったと思え、案件途中でくよくよと悩んだ記憶などは全て吹っ飛んでしまいます。全ての調達が終わり、 完了報告書を提出した時にはやり切った満足感でいっぱいになります。

(広報)
とてもよく分かりました。佐納さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

おわりに
いかがでしたでしょうか?
今回のインタビューを通じて、「調達代理」という仕事の重要性と、その現場で奮闘するスタッフの想いが少しでも伝われば嬉しく思います。

クラウンエイジェンツ・ジャパンでは、今回ご紹介したモザンビークの巡視船のように、多くの国々でODAを支える調達業務を行っています。それぞれのプロジェクトには、苦労や工夫、そして多くの感動があります。今後も、このブログを通じて現場のストーリーをご紹介してまいりますので、ぜひご期待ください。

次回のレポートをお楽しみに!